「MICHAELのカラフルな世界を旅しよう 」BO BEDRE 9月号2020
"tag med på en rejse igennem Michaels farverige verden"

黄色いカーテンはArne Aksel社のもので、太陽の強い日差しをやわらかくも刺激的な黄色い光に変化させ、まるで魔法をかけたかのように心を明るく心地よくさせる。
クリエイティブコンサルタントの Michael Schmidtは、黄色い服を着て、ダイニングでありキッチンでもあるこの黄色く染まった空間に立つ。その空間からは小さなバルコニーに行くことができる。この黄色の部屋から、バウハウスの三原色に
インスパイアされたというリビングに足を踏み入れてみる。コーナーには、モダンデザインやアートからの大胆な反応を受けとめるHans J. WegnerのYチェアがある。
クリエイティブコンサルタントのMichael Schmidtは、色や形、物体が持つ心理に対して深い理解があり、Nørrebroにある自身のアパートを概念的な総合芸術(Gesamtkunstwerket)に変換した。そこではすべての感覚が呼び起こされ、部屋それぞれがストーリーを語っている。




MICHAELは部屋のあたたかな雰囲気を損なわないようReform社のオーク材のキッチンを選んだだけではなく、キッチン周りの骨組みに、色やスタイルが変わってもいいようにとタイムレスなものを選んだ。カウンタートップはスチール製で、Verpan社のHive-pendlenと共にあたたかみがある全てのものとの対比を生む。壁の作品は、Frederik Næblerødのものなど。キッチンにあるタイルの柱はFile Under Pop社の石でてきており、この空間では美しい彫刻のように見える。黄色いカーテン越しにテラスを見と、Michaelがこの部屋をアナログ写真のあたたかい質感にちなんで「ポラロイド」ルームと名付けた理由がわかる。
Michael Schmidtは、数々のデンマークのデザインブランドのクリエイティブコンサルタントとして、物語を語ることを仕事にしている。Nørrebroの自宅でも、彼は物語を語っているのだ。彼は総合芸術(Gesamtkunstwerket:ドイツの作曲家、ワーグナーの提唱したもの)の分野における名匠である。総合芸術とは、個々の要素が持っている心理が革新的な集合体となって感覚的な空間を作り、習慣的な思考に働きかけ、それを揺るがすものだ。
MichaelがNørrebroのこのアパートに越してきたとき、すべてを一から始める必要があった。そのことは、彼にアパートのプランを考え直す機会を与えた。どの部屋がどの機能を持つべきか、またはどの壁を取り払うのか決めることに加え、彼は特に、各部屋がどんな体験を生み、どう感じられるべきかについて考えた。そしてここでは、色が最も重要な鍵を握っている。Michaelはデンマークの企業 File Under Pop社の力を借りて、各部屋が持つそれぞれのプロフィールや表現、感情と物語のカラーコンセプトを考え出した。
Michaelがポラロイドルームとも呼ぶ黄色い部屋は、キッチンとダイニングを据えたアパートの中心にある。ここは小さなバルコニーの入り口で、陽の光がたっぷりと差し込むので自然と長居したくなる。黄色のニュアンスは独特のあたたかい雰囲気をつくり出し、本能的に嬉しくなってしまう。それと同時に、この部屋には懐かしさと超近代的な何かが存在する。これは例えばHans J. Wegnerや Arne Jacobsen、 Poul Kjærholmらのクラシックな椅子のデザインが、デンマークの新しいデザイン会社であるReform社やFile Under Pop社、Arne Aksel社そしてMatias Moellenbach社らのデザインと組み合わせられた、大胆な構成に表れている。
黄色の部屋から、このアパートのイマジネーションの核心である広いリビングへ足を踏み入れる。ここではコーナーにあるグランドピアノとSono社のシステムの両方から音楽が奏でられている。このシステムはすべての部屋にインストールされ、アパートを通り抜ける旅に、さらなる感覚的要素を加えている。リビングの色はバウハウス運動と、その三原色の使い方からインスピレーションを受けている。天井はくすみがかった緑、壁にはライトグリーンの輝きがあり、同じくライトグリーンのカーテンから降り注ぐ光によってその色味は強調されている。青、赤、黒の要素が対比になっている。遊び心や創造性、周囲の環境に目を開くことを推奨するバウハウス運動のように、このクリエイティブな空間にも同じ意図があるのだ。この空間には、それぞれに物語を語るアート作品や、特定の時代とストーリー、文化を表現するデザインアイコンで溢れている。たくさんの相反する要素と出会う中で、空間にダイナミックで刺激的な雰囲気を与えるような興味深い対話が起こるのだ。
広いリビングの先には、色のトーンが抑えられた少し小さなリビングがある。Michaelはこの小さな部屋を、こもるための空間にし、読書やTVを見る際に使っている。この2つのリビングからは長い廊下に出られるのだが、その壁は廊下を照らす人工的で黄色味がかった明かりと対照的にするため、寒色系のグレーになっている。ドアの枠はダークブルーで塗られ、新しい空間、新しい世界への入り口を示している。
廊下の突き当たり、玄関の真向かいには寝室がある。ここでは涼しげな青の色合いが、空や海に飲み込まれたかのような気持ちにさせ、人が寝室に求める静けさを邪魔するようなアート作品や要素は何もない。ここにある装飾的な要素は、この部屋にやわらかな光をつくり出すイサムノグチの彫刻のような紙のランプと、壁に白い模様を浮かび上がらせているタイルだ。寝室の壁紙としてタイルを用いるのは、伝統的な手法ではない。しかし、人が見て、質問をして、不思議を感じさせる部屋を作るという、Michaelの大きなミッションにはマッチしている。彼は色、形、表面やアートを、従来とは違った方法で組み合わせることにより、訪れる人にその部屋についての意見を持つよう仕向ける。このアパートはMichaelの直感と人々の期待に応えようとする気持ちに導かれ、すべてのピースが大きなパズルの中で動き続けている、ダイナミックに揺れ動く物語なのだ。

ダイニングキッチンのことをMichaelはダイニングルームとキッチンと呼ぶ。ダイニングキッチンという言葉にはうんざりしていて、彼に言わせると古臭い考えなのだという。心地のよい光を理由に、彼はよくここに座って仕事をしている。
ダイニングテーブルはPlease Wait to be Seated社のEiermann2で、その上にはイサムノグチがVitra社のためにデザインした Akariがかかる。
テーブルにあわせているのはPoul KjærholmのPK1とArne Jacobsenのモスキートチェア。Montana bruge社のシェルフはベンチとしても使われている。

リビングルームの起点は、アパートの限られた場所にしか置けない大きなグランドピアノ。
そのためMichaelは、グランドピアノ周りの空間は遊びと創造性を駆り立てるようにするべきだと決めた。色に関して Michaelは、バウハウスの三原色である青・緑・赤からインスパイアされたが、同時に穏やかさも持ち合わせる。さらに、これはこの家全体に言える特徴なのだが、壁よりも天井に色があることで視点を上に向けさせ、慣れた動きに変化を生んでいる。そしてこの部屋には、社会的・文化的なことを連想させるものが多くあり、その並置がこの部屋にいる者に疑問を呼び起こし、刺激しているのだ。Mathias Malling Mortensenの大きな赤い切り絵が、Verner Panton社の Wireランプや Arne Jacobsenのスワンチェア、 Poul Kjærholmのソファテーブル PK61、Helle MardahlのガラスアートやVittoriano Viganòデザインのランプ VV Cinquanta Suspensionと共に飾られている。それぞれの存在が各時代と文化のアイコンであり、これらとの対面が人の考えを刺激する。

このテレビがある小さい部屋がアパートの他の部屋よりも色味を抑えているのは、この部屋が没頭するための場所だからである。良い映画や本と共にリラックスするのがこの部屋なのだ。
イーゼルに置かれたアート作品にも似たテレビは、Samsung社のThe Frame。
テレビを消した状態のとき、画面はSamsungアートコレクションから選んだ絵にすることができるので、まさに絵画作品のように見える。
フロアランプはイサムノグチがVitra社のためにデザインしたAkariで、ソファは Sofacompany社のもの。大きなリビングは、この小さなテレビ部屋につながっている。ドアの後ろにちらりと見えるのはデンマークのアーティストFrederik Næblerødによる大きなピンクの作品で、彼は今の時代において将来有望なアーティストである。Michaelはこの作品をNæblerødがまだ芸術アカデミーに通っていた頃、早々に手に入れた。


色を取り入れたインテリアMichaelからインスパイアされ、あなたの住まいにも色を取り入れてみましょう。簡単そうに見えるかも知れませんが、しっかりとした計画が要求されます。MichaelはFile Under Pop社と共同で、たくさんのカラーサンプルを試しながらアパート全体を一からカラーコーディネートしました。どの部屋も色調が整うだけではなく、アパート全体にまとまりが出るよう試みたのです。色が塗られた壁との対比が大きくなりすぎるので、白い壁はアパートのどこにもありません。一方、色を正しい方法で組み合わせれば、たくさんの色を使ったとしても落ち着いた表現は十分に可能です。この住まいの複数の場所は、濃い色の天井と、より落ち着いた色合いの壁になっています。それらが空間の中で私たちの五感を試し、目線を上や周囲へと向けさせながら、私たちはその空間に佇むのです。Michaelのインスタグラム@michaeldanskで今も続くアパートの進化を追い、インスピレーションを得ましょう。

この長い廊下は、アパートに入ってまず足を踏み入れる場所だ。この廊下のあかりは主に人工的なもので、まるでアパートの様々な部屋や宇宙へと開け放たれているかのようであることから、配色が最も難航した空間でもある。この難題は、人工的な黄色いあかりに相対する寒色のグレーを壁面に施し、濃いダークブルーのドアフレームが新たな宇宙への移行を示すことで解決した。天井はアパート全体の一貫したコンセプトを保ちつつ、Nuura社のランプの真鍮部分との美しい対比を生むターコイズブルーで塗られている。この廊下には、
Michaelのコレクションの中のモダンアートが飾られる。寝室の色は寒色系にまとめられ、青い天井は青空の下で目覚めるような感覚にさせる。寝室には注意を引くようなアートは
1つもなく、静寂した姿があるだけ。装飾的な要素としてはH+O社のグラフィックタイルと、芸術的な紙のランプ Akariがある。

<BO BEDRE 2020年9月号ページ74>