「製紙工場に隠された宝もの」BO BEDRE 2020年3月号
"PAPIRFABRIKKENS PERLE"

旧シルケボ—製紙工場内にあるこのペントハウスマンションは
シルケボ—湖の眺めを楽しめる上、インテリアが徹底しておりの、この街、
ともすればデンマークでもっとも美しいマンションのひとつかもしれない。
なぜこの場所を選んだのか、その理由を家の持ち主に聞いてみた。
旧シルケボ—製紙工場内にある完全に
リフォームされたマンションの家主は、都市の
イキイキした雰囲気も自然の穏やかさも気に
入っている。その思いはインテリアにも反映
されている。スチールやコンクリートといった
工業的な素材を用いつつも、温かい印象の木のパネルを使ったり、大きな窓からは自然光が
注いでいる。特注のキッチンと金属の棚は
Riis Snedkerier社が手がけた。

いたるところに自然の光がたっぷりと当たる家。245 m² あるこの大きなペントハウスマンションには大きな天窓があり、巨大なパノラマ窓がすべての壁についている。おまけに広いベランダでは、その下を流れるGudenåen川とシルケボ—湖を眺めることができる。このマンションは1844年に建てられた旧シルケボ—製紙工場の中にある。建物の外の一方には林や自然があり他方には街がある。マンションの家主は仕事の関係で世界中の大都市を行き来するが、狩りや釣りなどをして自然の中で過ごすことが好きなので理想的な立地である。
「このマンションは最初にみたときから気に入っていたので、もし売りに出されていたらぜひ購入したい、と不動産会社に連絡しました。しばらくすると、不動産会社の担当者から電話があり、マンションの住民がマンションを売りにだすことを決心した、という知らせを受けたのです。マンションを手に入れてすぐにリフォームを考え、準備を始めました。自然や街への愛を反映した住まいを作りたいと思っていました。ニューヨークのインダストリアルな雰囲気からインスピレーションを受けて、ブラックのスチールやコンクリート製の床にした一方、ナチュラルで温かい雰囲気が出るように、オーク材や革やウールといった天然素材も使いました。ホテルのように、この家ではシンプルな生活を送りたいのです」
「ニューヨークの雰囲気やホテルのような住まいを目指すとありきたりなものになってしまうのは当然です。誰だってホテルにずっといると、飽きてしまいますよね。でも、ホテルに泊まることはどこか特別であったりシンプルな気持ちになれます。落ち着いてリラックスできる場所で、複雑なところではないですよね」と家主は語る。
彼は細かいところまで念入りに考えた上で、インテリアを徹底することにした。
「このような大きなマンションの場合、あらゆるスタイルが可能になります。しかし、やり過ぎは良い結果をもたらすことがめったにないというのが、私のスタンス。まったく異なるものを色々と住まいに取り入れると、ごちゃごちゃな雰囲気になります。要らないものを省いたら、望み通りの落ち着いたいた雰囲気になりました」

大きなリビングでは工業的な素材と自然素材がうまく調和している。この住まいのすべての窓にはブラックの電動ブラインドが取り付けてあり、
スマートフォンのアプリで操作することができる。Copenhagen Blinds社製。
家の中にはリラックスできる小さな
コーナーがたくさんが設けられている。木材のベンチは部屋の仕切りにもなっている。
玄関では天窓から自然光がたっぷりと注いでいる。美しい小河、Gudenåenの眺めも楽しめる。



世界中のホテルのインテリアが大きなインスピレーションとなった。リラックスできるラウンジのような雰囲気の一角を作った。この一角では作りつけのソファの向かい側に、
Hay社のMags Softソファが置かれている。作りつけの照明や鉢植え、ブランケット、クッション、アート作品や陶芸が温かい雰囲気を作り出している。
細長いダイニングテーブルはRiis Snedkerier社製。WegnerがデザインしたブラックのYチェアや、Gino Sarfattiがデザインした二つのAstepランプもある。

ホテルの部屋の影響は寝室にもはっきりと現れている。寝室も他の部屋と同じく
シンプルな色合いにした。大きなベッドはHästens社製。洋服のスタンドはKristina Dam社。
ブラックのWEGNER社製のチェアCH25のそばにEames兄弟がデザインした三脚椅子がある。寝室のすぐ隣には仕事部屋と
バスルームがあり、生活空間としての一つのユニットになっている。
二つのバスルームでは玄関や寝室、
キッチンと同じようなブラックの金属
フレームが使われている。それにより、
インテリアに統一感がでる。ブラックの蛇口はVola社から、バスルームの家具はRiis Snedkerier社製。




仕事部屋の本棚はMogens Kochがデザインしたもの。Carl Hansen & Søn社製。オフィスチェアはArne JacobsenがデザインしたOxford Chair、Fritz Hansen社製。
カーペットはMuuto社、テーブルの上のライトはPH-照明器具で、Louis Poulsen社製。
廊下は寝室や仕事部屋、バスルームのプライベートユニットと大きな
リビングルームを結んでいる。廊下から二つの部屋に入ることができ、大きな作業部屋もここにある。
もう一つのバスルームでもスチールや木材、冷たい雰囲気と温かい雰囲気といった工業的な素材と自然素材が
うまく調和している。シンクはBoffi社、 バスタオルはGeorg Jensen Damask社製。


<BO BEDRE 2020年3月号>