「2O2O: 新シリーズ 小さな家で素敵に暮らす」BO BEDRE 2020年5月号
更新日:2020年7月2日
"2O2O: NY SERIE SMÅ HJEM"

デザインー建築家のカップルMalene hvidt & nikolaj Lorentz mentze が作り上げた魔法の洞窟彼らの主軸にあるのは人々が暮らした痕跡と存在感を彷彿させる事。

美しい採光 明るい光が天窓を通して照り込みダイニングルームを明るく照らす。天窓から続く大きな窓はアトリエを彷彿させる。アーティスティックな照明が多様な明かりを演出してくれる。真鍮のライトはFos作。Nikolajが兄のMathias Mentzeと共に担当したMarienborgでのインテリアデコレートでも使用された。壁際の木製のライトはNikolaj自身のデザイン製作による物。
MALENE HVIDT&NIKOLAJ LORENTS MENTZE Frederiksbergにある2人の住居で。

大きな無花果の木が天窓の光射す部屋のコーナーで育っている。この窓は以前暮らしていた画家が特別に入れた物。緑のライトはMuller Van Severenデザイン。テーブルはMaleneの祖父Peter Hvidt作。T型の椅子はOlavi Hanninen作。和紙の照明はイサム ノグチAkari UF3ーQ。テーブルの背後の絵はMaleneの姉妹のBarbara Hvidtと彼女の夫Jan Gleieとの共作。窓の白いオブジェはFrederiksberg Haveより。
渡り鳥が巣を作り南の国に飛び立ち再び帰って来た時、他の鳥が作った古巣を見つけ新しい枝を差し入れ新しい巣を作る度に、それらの巣の住人は変化していきます。古い巣は残っていてもこうして新しく生まれ変わり、鳥はどの巣が既に巣作りされているのか確認します。とデザイナーのNikolaj Lorentz Mentze氏は語ると同時に、小さな一本の枝を彼のコレクションのためにCecilia Daladier氏が製作した思い入れの強いケラミックの花瓶に立て入れる動作をして説明します。仕事上でもビジネスパートナーであるMalene Hvidt氏と供にFrederiksberg地区にあるSpacon&X.byggetの5階の古い屋根裏部屋にチャーミングな魔法の洞窟を作り上げました。そこでは彼等の生活の基盤となる一人息子と愛犬の生活が、毎日繰り広げられています。前説の鳥の巣の様に再び新しい巣作りをして新しい暮らしを始める事は居心地の良い物でなくてはいけないし、ショウルームの展示空間の様でもいけない。留守の時に誰かが部屋を訪問しても、あたかも先程まで人がいた様な感覚が大切だと思うと彼は語ります。
その小さな魔法の洞窟は、間切りになっていた壁が取り壊され大きな空間になって視線が抜け、圧迫感を緩和させ広く感じられます。そこではひきたてのコーヒーの香りが漂い犬は吠え小さな息子は床で遊び、MaleneとNikolajは走り廻って犬に注意しながらゲストに何も不足もないか心配りをしている姿は確かに幸せを感じさせてくれます。セッティングされている古いダイニングテーブルはMaleneの祖父Peter Hvidt氏作。彼はMalene同様建築家であり家具職人として、Hvidt&Mølgaard社で沢山の製作を手掛けました。コーヒー用に使っているグラスはNikolaj自身がデザインして制作した物。
「これは僕が最初にデザイン製作した最初のグラスです。上手く温度の保ち方が出来ず、歪な形になってしまったけど結果は家で使っていると何だか自分の個性を見るように、ある意味親密感が生まれます。この形状は確かに人間の手で作られた。僕の指紋が残ってる。デザイナーとして僕のやりたい事は間違いなく日常の生活に囲まれて根付いていく物、大袈裟に言えば魂を感じる物。使ってくれる人が大切にしてくれる事を願う。」とNikolajは言います。
MaleneとNikolajは自分達の家の中で何に囲まれて暮らしているかを常に意識してると言います。殆ど全ての家具やオブジェはそれぞれのストーリーを持って歴史を語っている。形状に驚いたりストーリーに特別な思い入れを持つ事はとても大事な事だと。
「あなたが見る一つのオブジェそしてそれが飾られた祖母のサイドテーブル。一瞬でその時代に連れ戻されます。その時の匂いや記憶。まるで残照の様に。又興味深くそれを引き立たせてくれるようにするのがインテリアコーディネートです。私のデザイナーとしてのプロフェッショナルな仕事上とても注意するのは会話。オブジェと人間と人間の間にある物。オブジェそのものより繋がりの方が大切です。そのものが何を語ってくれるかです。根底にあるのは知覚。人にはそれぞれの見方があります。自分が左右される人生でどの様に歩んできたかによって見方の変化も生まれます。それによって自分はどんな人なのか自身のアイデンティティを語ってくれる物と人とのラブストーリーです。」とNikolajは語ります。
様々な形で感じる、より親密で人間的なMaleneとNikolajの家。それはインテリアデコレーションやオブジェ 家具だけでは無く家そのものの空間に存在しています。鳥の巣と同様にさまざまな鳥が古い巣に新しい枝を置いたように19世紀に建てられたこの住居では古い時代に暮らしていたそれぞれの人の人生の痕跡が残っています。過去の痕跡を跡形も無く消すより壁や床に残しインテリアの一部として残しておく事がMaleneとNikolajの考え方。キッチンは70年代のキッチンアイランドをそのまま残しダークブルーに塗り替えNikolaj自身がデザインしたスチールキッチンで現代風にアレンジされてます。
「私達は常に他の人の痕跡の上に暮らしています。どうでも良いことと思うかも知れませんが、過去に暮らした人々の歴史を理解すれば自身の家により価値のあるストーリーが生まれます。」とNikolajは語ります。


テーブルを囲んでいるスツールは彼等のコレクションでそれぞれのストーリーを持っている物。Pierre Chapeau作のスツールやフレンチオリーブで作られたスツール等。ソファーはPiero LissoniiデザインのFritz Hansen社製。
手吹きグラスはNikolaj作。北欧でよくみられる西洋トネリコで塗りを施したソファーテーブルは1930年代に製作されたAxel Einar Hjorth作。円形の厚みのあるオブジェと共に飾られている小さな陶器はCecilie Daladierが兄Mathias Mentzeの為に製作した物。Nikolajはそれに小枝を刺す。


息子の誕生の時に気付いた事。広い一つの空間に変えた後家族が増えた時、間仕切りがないことに気付いた二人は間仕切り用としてBørge MogensenとGrethe Meyer共作のBoligens Byggeskabeと呼ばれる米松で出来た間仕切りを設置。片方にはNikolaj自身で棚を製作。
キッチン 1970年代のキッチンは残しダークブルーに塗り替えNikolaj自身がデザインしたスチールキッチンを現代風にアレンジ。


あなたが見る一つのオブジェ そしてそれらが飾られた祖母のサイドテール。一瞬でその時代に連れ戻されます。その時の匂いや記憶。まるで残照の様に。

Maleneの色鮮やかなワードローブ 個性が光るワードローブにモノトーンのアースカラーで落ち着きのある寝室。床にはわざと古い時代の痕跡を残している。壁に掛かっている絵はMaleneの祖父が描いた彼の愛犬の絵。多くの人は古いパイプなど取り壊すがMaleneとNikolajはあえて残しこの部屋の歴史や足跡を語っている物を置いておきたいと言う。ハンティングチェアーは銅製でNikolaj 作。
一歩踏み入れる時 入室した時小さな圧迫感を感じるより広々ワンルームの空間は全体を見渡せられる。小さな浴室はMaleneとNikolaj二人でデザインしてリノベーションされた。グレーのタイルと美しく釣り合うブルーの花瓶はYves Klein-blåデザイン。
<BO BEDRE 2020年5月号>