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「想像力によって再現された空間 」BO BEDRE 2019年10月号

"Kreativitet og genfødte kvadratmeter i herskabslejligheden"



設計士のJulie Trier Brøgger氏はHelen Hilario Jønsson氏の伝統的なマンショ

ンを自身の想像力を働かせながら現代風にリフォームしました。その結果得られたのは夢のようなキッチン。惜しみなく降り注ぐ採光や普段使われなかった部屋が一新されました。


マンションのスペースをフル活用する設計士のヒント

廊下として使われるスペースは無駄。廊下のスペースは部屋と統合させその場所は共用部屋部屋として使用出来るようになり、スペースをフル活用できる。

ドアの配置を考慮して適切な家具の位置を決め廊下だった場所を空間にしたことで余裕なスペース感覚が得られる。そのため、ドアの設置は重要なポイント。

日の当たる場所は大切。陽光がないところは暗くて使えない無駄なスペースになってしまう。そのため、すべての部屋には十分な日当たりがあることを配慮する。それに日差しが複数のアングルから入ることも大事。そうすると、余裕の空間が得られる。



お酒のキャビネット

Julie Trier Brøgger氏は以前ドアであった場所を扉付のお酒専用のキャビネットにリフォーム。余った床の板を棚に利用して奥行きの浅い場所は各種の酒を保管するスペースにぴったり。

キッチン

キッチンユニットはキッチンの中心に置くことで料理を作りながら会話が可能。パイン製やスチール製のキッチンは、Køkkensnedkeren社から。二つの照明器具は床と同色で、同社から。




リフォームに関するマンション所有者のヒント

どのような住まいを望んでいるのか、それを把握するため、余裕のある準備期間が必要。

設計士に信頼を持つこと。「Julie Trier Brøgger氏や彼女の同僚がリフォームのミーティングを担当し、職人との打ち合わせも。必要な時は私が参加して私の要求や意見を入れました。最終的には満足出来ました。」とHelen Hilario Jønsson氏が言う。

大切な事は自分に合っている設計士を見つけること。

「私は設計士のアイデアがとても気に入ったし、彼女たちも私の好みや提案に好感を持ってくれました。私たちは趣味がよく合ったので非常によかったです。」

それと少し余裕のある予算を用意すること。

余裕のある予算があれば、リフォーム途中に色々生じるアイデアを実現できる。限られた予算の場合、新しいアイデアを実現できないこともあるので、それはとても残念。


収納スペースになったベンチ

幾つかのパイプは移動できなかったので、ベランダへ通じるもう一つのドアを作ることを諦めるしかなかった。しかし、それで良いアイデアが誕生した。パイプを囲むベンチを作った。ここでは朝食が食べられるし、遊びにくる友人がここに座り、おしゃべりもできる。おまけにベランダに使うクッションはここに収納できる。ベンチの材料はキッチンユニットと同じ材料で。

収納

作り付けの食器棚がたくさんあるので、キッチンの収納には困らない。壁のキャビネットは装飾も取っ手もないシンプルなデザイン。それによってキャビネットが壁のように見え、キッチンのニュートラルな背景になる。部屋とのバランスをとるため、他方の壁のキャビネットには100年前の窓ガラスを入れた。

キッチンの床

キッチンは矢筈模様の新しいオーク床を敷いた。灰白色だから、典型的な矢筈模様がかすかに見える。Helen Hilario Jønsson氏自身はセメントの床か明るい色の木製床を考えていたが、Julie Trier Brøgger氏が提案したキッチンユニットと対照になるこのすてきなダークトーン色の床をたいへん気に入っている。




キッチンの日当たり

廊下を廃止し、ベランダへ通じる2戸のドアや1つの窓ができたので、マンションの暗さがなくなった。光が玄関まで注ぐようになったことで、ガラスのドアを設置。換気扇

キッチンの景観が邪魔にならないよう、天井からではなく、テーブルの脇からでてくる換気扇を使用。料理を作る際しか見えない換気扇はGaggenau社から。







多くの人にとって住まいの部屋の数が足りないということが悩みの種だ。しかし、子どもが独立してから、Helen Hilario Jønsson氏にとっては問題が逆だった。

 コペンハーゲンの憧れの地区にある185平方メートルの豪華なマンションに住んでいる彼女は別のところに引っ越す気持ちがなかった。おそらく同じようなマンションは手に入らないし、子供達を育てた思い出のあるこのマンションも手放したくなかった。しかし、7部屋もあるこのマンションは彼女の今のライフスタイルに合っていなかった。

 「子どもがここに暮らしていたときに比べて、部屋の使い方が完全に変わったので、生活スペースが無駄な使い方になってしまった。いくつかの部屋には自転車や洋服を置くだけのただの収納スペースとして使用するのみでした。」とHelen Hilario Jønsson氏が言う。

 その時期、中庭向けの壁にマンション全域に大きなベランダを取り付ける事になった。しかし、新設されるベランダの近くにはバスルーム、細長いキッチンや小さな部屋があったので、スペースをもっと有効に使えるのではないかとリフォームを思い立ち先ず設計士に相談。彼女が選んだ設計士はZoom Arkitekter設計事務所の、Danske BoligArkitekterの会員でもあるJulie Trier Brøgger氏だった。Julie氏は豊富なアイデアを持ち、マンションの雰囲気を把握してくれた。そして、リビングルームの様な広く余裕あるスペースを他の部屋やキッチンにも適用させる提案を出してきた。「彼女の見解はとても気に入ったものでした。」とHelen Hilario Jønsson氏が言う。

 Julie Trier Brøgger氏のリフォームプランによって、三つの小さな部屋や廊下の壁が取り壊され、ベランダに向かって大きなキッチンが出現。以前あった子ども部屋には新しい大きなバスルーム。

 「このマンションは光がとても大切です。以前は、マンションが二つの部分に分かれていた為、道路に面している大きなリビングのある明るい部分と、中庭に面している細長い小さな部屋や廊下のある暗い部分で作られていました。その昔使用人が台所で働き、マンションの所有者がリビングだけで生活していたライフスタイルに合わせた作りだった。現在、キッチンが住まいの中心になっているライフスタイルにはそのような部屋配置は無駄になります。リフォーム後は部屋が大きくなり、昔からある大きなリビングとバランスがとれ、マンションの一貫性ができた」とJulie Trier Brøgger氏が言う。

 今回のリフォームの成果により、玄関からキッチンまで見通す事が可能となり、ベランダまでガラスドアが2戸と窓があるので、曇っている秋の日でも大きなキッチンには自然の光がたくさん注いでくる。キッチンの真ん中には職人に作ってもらった美しいパイン製のキッチンアイランド、上の板はスチール製。この明るく自然な材料は新しくなった矢筈模様のあたたかいグレイ色の床との良い対照になっている。

 「私にとってキッチンは大切なスペースだが、モダンであっても作業しやすいところ、友人をキッチンにも迎えられるスペースを望んでいました。と同時にこの古いマンションともバランスを保つ必要があった。以前、友人が遊びに来たとき、私が料理を用意している間は彼らはリビングで待つしかなかったので、いつも少し急ぎイライラしていた。でも、今のキッチンは余裕のスペースがあるので、私が料理をしながら、友人がここにいて会話できる。それは本当によかった」とHelen Hilario Jønsson氏が言う。彼女は今、キッチンで前菜や食前酒を友人に提供するときもある。

 設計士のJulie Trier Brøgger氏は古いものと新しいもののバランスをマンション全体に取り入れるように意識した。そのため、新しく取り付ける本棚やクローゼットの上下にクラシックな羽目板を付け、古いドアはマンションの別の場所で再利用し、暖房用のラジエーター隠しをオリジナルそっくりの昔風に作りあげた。キッチンのガラス扉のキャビネットが新品だとは誰も思わないだろう。

 照明器具、フック、付属品といった小物でもJulie Trier Brøgger氏に相談した。インテリアに関して何か決断しなければならないとき、彼女は毎回、三つの提案をメールでHelen Hilario Jønsson氏に送った。

「私だったら、決して今の照明器具や床は考えてもいなかった。最初は、柔らかい感触のセメント製又は明るい色の木製の床にすると思っていたが、今の床になったことは本当に嬉しい。Julie氏は設計士としての可能性を意見してくれ、市場にある材料や製品をよく把握している。私のアイデアもよく取り入れてくれました。」とHelen Hilario Jønsson氏が言う。

 ここが特別なマンションになったのはJulie Trier Brøgger氏の豊富な想像力や細かい対応によるものが多大ですが、Helen氏の意見を取り入れてマンションのいたるところに開放可能な場所、持ち上げることや、ひっぱる事が出来る特殊の取り組みを作った事も活きています。

 Helen Hilario Jønsson氏の成人になった子供やフェロー諸島に住む親戚が遊びにくると、昔と違って、リビングでマットレスや子ども部屋で寝なくてすむ。その代りに、仕事部屋の大きな手作りの本棚についている皮のストラップを引っ張ると、二人用ベッドが開いて下りる。客が帰ったら、折り畳みことができる。このように、普段使わないベッドを置いておく必要がない。キッチンも同じような取り組みがあります。キッチンアイランドの真ん中にある扉を開けると、一般的な食洗器が入っていますが、その周囲に洗剤などの棚も付けてある。壁の白い取り付けのキャビネットの中に電気ポットやコーヒーメーカーが収納されてるコーヒーステーションがある。収納や掃除が非常に楽になっている。



住まいについての情報

住民:  Helen Hilario Jønsson氏と彼女のパートナー

リフォームの後: 185平方メートルの5LDKの豪華なマンションが完全リフォームされた。

一つの部屋、バスルーム、小さなキッチンや廊下はベランダへアクセス出来る大きなキッチンに変わり、バスルームは別の場所で新設。収納用の小さな部屋を作り、寝室への廊下は移動させ、マンション全体の床は新しく。キッチン、バスルームや収納用部屋には床暖房を付けた。マンション全体にスピーカーを取り付け、別の部屋に移動する度に音量を上げる事もない。さらに、取り付けのクローゼットや棚と収納スペースも作った。マンションの特別な雰囲気を保つため、Julie Trier Brøgger氏は照明器具から換気扇、バスルームのタイルやドアの取っ手まで提案した。

工程:  Helen Hilario Jønsson氏は2016年9月にJulie Trier Brøgger氏に連絡。その後、二人は3-4回リフォームの工程についてミーティング。2017年1月、ベランダの工事が完成した。リフォーム工事は2017年5月に開始し、約一年後2018年春に完成した。設計士のJulie Trier Brøgger氏が最初のアイデアから工事まで担当した。工事中、彼女は週一回、リフォームの進展についてHelen Hilario Jønsson氏にメールを送った。

材料: Dinesen社からパイン製板、矢筈模様のオーク床、キッチンはBoxone Pine GK42、Køkkensnedkeren社から。取り付のキャビネットなどはオーダーメイド。

トータルコスト: 320万デンマーククローネ、消費税や相談を含め

        設計士への報酬:25万デンマーククローネ




リビングとソファ

新しい床と天井に設置された取り付のスピーカー以外、リビングは何も変わっていない。古い羽目板とドアの周囲のしっくいがあるので、昔ながらの豪華なマンションだと分かる。ソファはCasaShopで購入Flexform社から。

ダイニングルーム

キッチンからダイニングルームに入ることができる。ダイニングルームはアーネ・ヤコブセン氏がデザインした典型的な白色のセブン・チェアやピート・ハインのデザインしたSuper Ellipseテーブル。壁の方面にはGreen Squareから古い中国産のキャビネットが置いてある。

池向けのリビング

部屋の丸いカーブと各方向の窓があるので、コペンハーゲン中心部にある池に面しているこのリビングには素晴らしい日が差し込む。家具はPoul Kjærholm 氏やMogens Koch氏がデザインした典型的なデンマークの家具。ソファはJohannnes Spalt氏のデザインしたConstanze Daybed、Klassik店で購入したもの。ソファはベットにも使用出来る作りなので、二人がここで眠ることができる。






端っこのリビング

このリビングからもう一つのリビングやダイニングルームまで見通せる。


リフォームしても住まいの元の雰囲気をどうキープするのか、設計士のヒント

あなたの住まいの特徴は何でしょうか?あなたの住まいを観察してみましょう。その住まいの良い点、面白い点をもう一度自覚してみる。答えはリフォームしても、保留しておきたい所。特徴のあるものは別のところで再利用すること。例えば、すてきな床かキャビネットを外したら、そのものを別の部屋で再利用するか、同じようなラインを新しいもので再現する。細部な所は別の新しいエレメントで使う。このマンションでは新しく作った取り付けのキャビネットや棚にも羽目板を付けたので、空間一貫の感覚ができた。



この記事はDanske BoligArkitekter(デンマーク住まい設計士協会)と協力して書かれた。協会のホームページwww.danskeboligarkitekter.dk では実現された数百プロジェクトがイラスト付きで紹介される。Danske BoligArkitekterは個人のクライアントのプロジェクトを経験豊富のデンマーク全国の80社の協会である。すべて会員は住まいの省エネルギーの取り組みの研修を受けた又は同様の資格を持つ。会員はDanske BoligArkitekterの特別な損害賠償保健でカバーされている。







典型的な寝室

住まいの流れをつくることが大切。そのため、寝室はリビングルームの延長ではなく個別の部屋として壁を入れた。現在、寝室はバスルームに向いているので使いやすくなっている。寝室の一つの壁には大きな取り付けのクローゼットを設置。

個性があふれるバスルーム

シンプルなライン、最高の材料、模様のあるモザイク床のあるバスルームは豪華なマンションの雰囲気に合わせながらも、モダンな仕上にもなっている。セメント製のタイルはJaime Hayon 氏のデザインしたもの、Bisazza社から。オーク製の台はマンションの床と同じ灰色、Casabeth社から。シャワー室の付属品は真鍮製、Vola社から。照明器具はKøbenhavns Møbelsnedkeriから。






<BO BEDRE 2019年10月号>

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