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  • 執筆者の写真N X C

「ユトランド半島北部の砂丘にある、一粒の小さな真珠 」BO BEDRE 8月号 - 2 2020

"En lille perle i de nordjyske klitter"





そのサマーハウスは杉材で覆われ、屋根の下には雨どいが隠されている。そのため、外壁と屋根の継ぎ目はなめらかでシンプルだ。不要なものをすべて取り除くことで、その家は自然の中で優雅に佇み、砂丘の景色に溶け込んでいる。夫婦は周囲の環境にぴったりの雰囲気を作り出すため、家の周りにさらにたくさんのビーチグラスを植えることにした。コンクリートのテラスは、よく晴れた日に夫婦が頻繁に使っている場所だ。外壁の深い切り込みは、北海からの強風を避けるためである。庭の家具はFermob社のもの。大きな窓はKrone Vinduer社製で、幅は3m以上もある。彼らは、家のほぼすべての角度から自然の素晴らしい景色が見渡せるように気を配った。


GitteとPer夫妻にとって『小さな住まい』は、意識したものではなかった。しかし、

ユトランド半島北部の端、Pandrupの砂丘へのドライブで、彼らは65㎡の

サマーハウスしか建てられないような土地の自然と、落ち着いた周囲の環境に

一瞬で恋に落ちてしまった。そして彼らはこの場所に、慌ただしい日常から離れて英気を養い、リラックスするための完璧な家を建てた。


砂丘の風景とビーチグラスが隣人であり、裏庭には北海がある。肩の力を抜いて、新鮮な空気を吸い込むまでは、このサマーハウス周辺に長く留まる人はいないだろ。サマーハウスに最適な土地を求め、偶然GPSに住所が表示されたとき、PerとGitte夫妻はまさにそんな安らぎの感覚に惹かれた。

「私たちはこの土地を諦めていました。65㎡までしか建てられないので、私たちには小さすぎると思ったのです。でも、とりあえずその場所を通ってみることにしました。車を出て、古いサマーハウスの前にあったベンチに腰掛けてみると、ただその場所に恋に落ちてしまったんですよね」とGitteは言う。

その後夫婦はすぐに、新しいサマーハウスには何が必要で、どのように スペースを最大限に活用できるのか模索し始めた。また同時に、その家が周囲環境に対して適切な外観であるように追求した。

「私たちは、家がこの風景を可能な限り邪魔しないよう心がけました。 そのため、本当に少しの建材しか使っていません。杉やオークを使用し、大きな窓は魔法のような自然をインテリアの一部にします。そういった意味では、このサマーハウスは美しく、機能的になりました。この制限のある場所は、私たちに優先順位やスマートな解決策についてよく考える機会を与えてくれました」Gitteはそのように話した。

彼女は微笑みながら、ヒュッゲであり機能的でなければいけない新たな サマーハウスに必要とされた、全ての収納問題を解決するための創意工夫について、どれほど考えさせられたのか教えてくれる。

「私たちはベッド横の棚にオーク材のボックスを備え付けました。それは今、ベッドサイドテーブルとして使われています。さらに食洗機をキッチンに設置しないことにしました。ここにいるときは、お皿やコップは少ししか使いませんから。手で洗ったほうが早いですし、それがサマーハウスにいるということなんです」設計事務所のN+P Arkitekturがこのサマーハウスの設計を手がけた。大自然の真ん中で、シンプルなラインと少ない建材の 『小さな住まい』 の本質に対し、一層の注力が要求されるこの限られた土地に建築することは、彼らにとって面白い挑戦だった。

「この規模のプロジェクトに携わる際には、立派な建築的手腕は いりません。余分なものは一切削ぎ落とし、繊細で控えめに、そして周りの風景に馴染むような色や建材を活用し、全てを順応させることだけに集中するのです。この家は木で建設した、砂丘の頂上なのです」N+P Arkitektur社のJesperKorf氏はこのように語る。

GitteとPerは1ヶ月に一度ほど、日常から切り離され、この小さな場所で 英気を養うためにユトランド半島北部の砂丘にやってくる。

「この家のスペースはとても限られているので、騒々しいものは何も置きませんでした。家の中にも、私たちをリラックスさせてくれる周辺の風景にも、すごく特別な穏やかさがあります。それは、誰しもが時には必要とするものですよね」Gitteはそう説明する。



キッチンと一体になったリビングは、

サマーハウスの二部屋のうち、大きい方の部屋。ダイニングテーブルBrickはGervasoni社、Primumチェアは Bent Hansen社のもの。ダイニングテーブルの上のランプは

Secto社製で、黒のスポットライトはAntidark社のものだ。夫婦は、冷蔵庫も含め

キッチン全体を地面から浮かせることにした。

そうすることで実際よりも部屋が広いかのように錯覚させるのだ。オーク材のキッチンは、このサマーハウス全ての木製品を手掛けたScharling Woodwork社による特注

デザイン。大きな窓が自然を室内に取り込み、

砂丘に囲まれたリビングを実現する。窓枠の木の色と壁の色とが、景色と完璧にマッチする。幅の広い窓枠では、様々な装飾品を飾ったり、そこに座って本を読んだり景色を楽しむことも出来る。暖炉はM-Design社製。ライトブルーの

ソファはBo-Tikken社のもので、あわせたローテーブルは中国の古いダイニングテーブル。夫婦はわざとテレビを置かず、その代わりにソファを砂丘の景色が広がる方へ向けている。


夫婦と建築家からの役立つ

アドバイス

優先順位をつける: サマーハウスを何に使うか、日常において機能的であるには何が大事なのかよく考える。例えば、PerとGitteの サマーハウスのように、広い共用スペースや 寝室を望んでいるかなど。

賢い建築、インテリアの選択: このサマーハウスでは大きな窓が、家を実際よりも広く見せている。地面から浮いたキッチンキャビネットは軽やかな印象を与え、かつ部屋の掃除もしやすい。

スペースを有効活用する: ひとつの部屋に複数の機能を持たせるのは賢明だ。それは収納に関しても当てはまる。例えば、クローゼットの中に収納を作りつけたり、 PerとGitteのように寝室の特注シェルフをベッドサイドテーブルとして使ったりもする。





バスルームにある洗面台の上にはGitteがこの家のために特別にデザインしてもらった、現代版の薬棚がある。石の洗面ボウルは、 HellerupにあるByens Sanitet & Fliserで夫婦が見つけた一点もの。洗面ボウルの色のニュアンスがオーク材とバスルームのコンクリートの床とよく調和している。天井と夫婦のベッドの後ろにあるスリットは、大きなヘッドボードの代わりとして面白い視覚効果を生むほか、他の部屋からの音を吸音するといった役割もある。ダークブルーのリノリウム製クローゼットは、コンクリートの色と温かみのある木の色によく合う。ベッドランプは Linea Light社のDavide Oppizzi氏によるもの。ベッドの横にあるのは、Scharling Woodwork社が手がけた、ベッドサイドテーブルとしても機能する小さなオーク材のボックスを組み込んだ埋め込み式の棚。ボックスにはLEDライトとコンセントを内蔵し、携帯電話が充電できる。クローゼット横は洋服をフックに掛けられるスペースになっている。引き出しを地面から少しだけ浮かせることによって、軽やかな印象を与える。はじめにサマーハウスに足を踏み入れると、まずあるのが小さな玄関だ。スペースは限られていたが、夫婦にとっては優先順位の高い、大切なことだった。コートや泥だらけの靴のためのスペースを設けることには大きな利点があると、彼らは知っていたのだ。




外壁の縁に備えられたライトが、テラスでの気持ちのいい夏の夜の時間を引き延ばす。場所も取らず、風や天候に左右されないスマートな解決策だ。夫婦が Pandrupの土地を手に入れてからサマーハウスが完成するまで、3年かかった。それは湾岸管理局やJammerbugtの自治体などに様々な許可を求める必要があったからだ。当然、該当する地区計画を守り、家の周りの砂丘よりも高い建物を建てないことが重要だ。しかしこうして今、夕日や北海を見渡すこの環境に彼らのサマーハウスは完璧に溶け込んでいる。


(デンマークの住宅建築家たち)について

Danske boligarkitekter

この住まいのレポートは、Danske BoligArkitekterとの共同制作です。danskeboligarkitekter.dkを訪れて、数百ものプロジェクトの説明と写真をご覧ください。Danske BoligArkitekterは、国内の80名以上の独立した建築家たちによる組織で、全員が私有住宅の建築プロジェクトの経験を記録しています。メンバーは、住まいのエネルギー効率化についての教育を受けているか、それと同様の知識を有しています。メンバー全員がDanskeBoligArkitekterの特別な損害賠償保険の対象で、建築家が事業を終了した場合においても、コンサルティングを受けることが出来ます。


<BO BEDRE 2020年8月号-2>

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