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「コペンハーゲンの北 」BO BEDRE 2月号2021

"På en villavej nord for københavn finder man dette nybyggede hus"



ある住宅街に建つ、50年代モダニズム建築を見事にオマージュした新築の家




















ハウスナンバーのフォントは、50年代の建築家Richard Neutraのデザインで、彼の設計した住宅にも使われたもの。リビングを覗けば、夫婦の50年代に対する憧れが見て取れる。天井のランプは George NelsonデザインのBubble Lampで、カリフォルニアのミッドセンチュリーモダンを代表するもの。椅子は1950年に生産されたH. J. WegnerのCH25、テーブルはIsamu Noguchiの1947年製Coffee Tableだ。ソファはこの家を設計した建築家がデザインし、職人が製作、テキスタイルはKvadrat社の Re-woolを使用。壁に掛かった絵は、芸術アカデミーの准教授Hannah Heilmann作。






CAMILLAは、庭に向かってひらけたこの新しい住まいで過ごすことを、とても気に入っている。光はCamillaとKasperが、建築家Erik Christian Sørensenの家を訪れたときに、最初に心奪われたものだった。二人はそれを自分たちの家に再現しようとした。そのため、庭に面した大きな窓と天窓の両方が存在し、室内にたくさんの光が差し込んでいる。また、リギダマツでできた天井はあたたかな印象を与え、音の響きも調整する。この広いリビングダイニングキッチンでは、作り付けの棚とソファが、自然な仕切りの役割を果たしている。CamillaとKasperにとっての家の建築の大部分は、内と外の境界線を取り払うことだった。例えば、内と外が溶けあったようなこのテラスがそう。庭はHaveselskabet所属のMette Rønneのスケッチに基づいてつくられた。表はややわかりやすい和風の庭であるのに対し、裏庭は遊びがあり、虫にとって優しい植物たちで溢れている。夏には蜂や蝶、鳥や生命の海に、人は足を踏み入れる事になる。




コペンハーゲンの北にある住宅街で、CamillaとKasperは3人の子供たちと新築の家に住んでいる。この家はまるで50年代に建てられたかのように見えるが、それは偶然などではない。数年前からこの夫婦は、まさにその時代の建築に興味を持っていたのだが、その興味は、偉大なミッドセンチュリーの建築家Charles EamesとRay Eames、Frank Lloyd Wright、そしてJohn Lautnerについて取り上げた TVシリーズがきっかけで生まれた。CamillaとKasperが家を建てるこの土地を見つけたとき、将来の家へのインスピレーションを得るために、デンマークの50年代の建築について詳しく知ろうとした。 デンマークの建築家Christoffer HarlangとFinn Moniesの1950年代の自宅について記された、 Michael Sheridan氏の著書「Mesterværker -enfamiliehuset i dansk arkitekturs guldalder samt Eget hus」などを読むのに加え、二人が訪問を許されたデンマークの建築家Erik Christian Sørensen邸のリサーチに没頭。

「あれは本当に、特別な感覚的体験でした!家の中の光には生命感があり、惚れ惚れするような透明感があったのです。私たちは、その家の美しい職人技に大興奮でした。—— 特に玄関。私たちにとっては、そこに、基本的な考え方の中の何かがあったのです。つまり、自慢するための家を建てるのではなく、素敵な人生のフレームとしての家を建てる、ということです。この考えは例えば、外の通り対しては閉じ、庭やプライベート空間に対しては非常に開放的な、私たちの家にも取り入れました」Camillaはこう語る。

Erik Christian Sørensen邸に強く惹かれたこの夫婦は、彼の教え子のひとりで、著名なデンマーク人建築家Lene Tranbergに連絡を取った。彼女は二人に、独立したばかりの同僚Peter Kjærを推薦。 CamillaとKasperは、Peterとの選択が最良だったと思っている。彼は二人の話によく耳を傾けてくれ、そしてとても細やかな仕事ぶりであった。彼は90ページにもわたる図面を作成し、全てのプロセスにおいて施工業者との連絡を密に取ったのである。

「この家がこれほどまでに完成されているのは、まさにPeterが細部にまでこだわってくれたからです。建築家は、産業化されたスタイルと、いくつかの解決策を打ち出す、ということが多いのですが、これは建築家たちへの支払いを抑えるためです。そのため、欲しいものを得るにはお金がかかる、ということを、計算に入れておくべきですね。ただ、そのお金は支払う価値はあります。私たちと職人たちを、全てのプロセスで繋いでくれる建築家と一緒に取り組めたことは、大きな安心感がありましたよ」と Camillaが説明する。

家の構造そのもののディテール以外にも、夫婦は家の壁の色選びにも長い時間を費やした。 コルビュジエと彼のカラーコードにインスパイアされ、二人は色が空間にもたらすものに気づき、新しい家のインテリアは、色が中心的な役割を果たすべきだと知る。コルビュジエが言ったように、建築において、色は設計図と同じくらい重要な基本要素なのだ。これは、この夫婦が守ってきたモットーでもある。色がどのように家全体の重要な部分を占めるようになったか、うかがい知ることができるであろう。

「全ての表層に、色や素材選びでバリエーションをつくったり、日中の光が、選んだ色にどんな影響をもたらしたりするのか、とても気を配ります。ある意味でこの家の色は、そこまで強くはありません。なぜなら、この家にはどこにも白はありませんから。代わりに、廊下、キッチン、リビングとダイニングルームのベースカラーとして、ブラックとライトグリーンを選びました。キッチンにオレンジを使うなんて考えたこともなかったのですが、2年経った今、ますますこの色が好きになっています」こうCamillaは話してくれた。

この建物に不可欠な要素としての、色と素材。子供たちが成長し家を出たときに、間取りを変えやすいモジュール方式の構造。内と外のあいまいな移り変わり。そして、いくつもの作り付け家具。これらのことから、いかにこの家が全体を考えられているかが明白である。まさにミッドセンチュリーモダンの時代のようだ。この家は、今なお関心の高い建築とデザイン的思想への、完全なオマージュとして建っているのだ。





その有機的な様子は、磨き上げられたコンクリートの床に見て取れる。夫婦と建築家が、相応しい色味かつ自然のような石のブレンドを、と時間をかけて見つけたもので、自然の不揃いさに倣っている。つまり、これも外と内の境界線を取り払うひとつの要素なのだ。キッチンの家具は &Shufl社、引き出しはドイツの職人作。アイランドキッチンの上のランプは、デンマークのAnour社製で、色はブルースチール。

バースツールは デザインスタジオFramaのもの。バースツールの座面は革製で、テーブルトップの冷たいスチールと柔らかな対比をなしている。廊下を通り抜けたのちに広くて開放的な空間に出るのは、建築的な狙いだ。これに、訪れる人は嬉しいリアクションをする。廊下の キャビネットは&Shufl社製で、オリーブ色のリノリウムでできている。次頁:差し込む光が、ジオメトリックなこの家のフォルムと好相性。家族の気持ちや幸福度に大きな影響を与えている。植物はこの住まいのスタイルにとって大切な要素のひとつであり、数ある大きな窓とともに、内と外の境界線を曖昧にしている。


大きな窓を開け放ち、ダイニングルームとテラスを一つにできることで、内と外が溶けあうのだ。この効果は、屋内外のダイニングエリアがほぼ鏡写しになっていることで、より強調されている。ダイニングテーブルの上には George Nelsonのランプを吊り下げている。Risskov Møbelsnedkeri製のテーブルの周りを、H. J. Wegnerの名作Yチェアが囲む。



























書斎にはEamesのオフィスチェアとHayのデスクがある。天井のランプはYAMAGIWAのペンダント照明 MAYUHANA Ⅱ。ランプの持つ和の趣は、この家に似合うので購入。カリフォルニアのミッドセンチュリー

スタイルの中で使っている。バンブーのロール

カーテンは同様のスタイルに触発されたもの。寝室は全体に寄り添うため、家の他の箇所と同じ色と素材の組み合わせでまとめた。バスルームの床の

タイルはMutina社のMewsで、Barber & Osgerbyによるデザイン。インク色が、オリーブ

カラーの家具によく合う。真鍮のウォールランプは Estiluz 社のSmile、水栓はTapwell社のものでランプと同じく真鍮製。





















<BO BEDRE 2021年2月号>

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